歴史的にレベルの低い国連事務総長のなかでも際立って無能。核拡散の脅威や難民危機にも関心を示さない潘のおかげで、国連はあってもなくても関係ない存在に堕ちた
2009年6月23日(火)16時56分
ジェーコブ・ハイルブラン(ナショナル・インタレスト誌シニアエディター)
情けない前任者たちと比べても、今の潘基文(バン・キムン)事務総長の無能ぶりは際立っている。韓国外交通商部長官(外相)から現職に転じた後の2年半の間に、何かとんでもない失敗を犯したというわけではない。
だがグローバルな指導力が切実に必要とされ、地球温暖化や国際テロ、60年ぶりの金融危機への対応が求められているときに、潘は世界中で名誉学位を収集して歩き、見事なまでに何も記憶に残らない声明を発表し、事務総長として影響力を発揮できたかもしれない貴重な機会を無駄にすることに費やしている。
彼は、行き当たりばったりに世界のあちこちを旅するいわば「偶然の旅行者」になった。遊び半分の事務総長だ。
国連は今や存在しないも同然に
核拡散防止やアフガニスタン復興に貢献するため、大胆な演説で国際世論の支持を呼びかけるわけでもない。人権の擁護者として活躍するどころか、難民を助けようともしない。
例によって名誉学位を受けるため4月にマルタを訪問したときは、マルタがアフリカからの不法移民を船でイタリアに送り出している問題について聞かれたが、答えは逃げ腰だった。「介入する立場にない」
スリランカ内戦で多くのタミル人が「人間の盾」として反政府組織に海岸沿いに連行されても、潘とその顧問たちはニューヨークの国連本部で手をこまねくだけで、やっと現地に赴いたのは内戦が終わってからだ。
彼の指揮の下、国連は単に役立たない組織になっただけでなく、あってもなくてもほとんど関係ない存在になった。
外部の専門家には、潘は不評だった。ジャーナリストのジェームズ・トラウブは、著書「善意」のなかで、事務総長選の最中の潘がニューヨークのシンクタンク、外交評議会で行った演説を回想している。「退屈な演説と意味のわからない下手な英語のせいで、ついうたた寝をしてしまった」
オフィスに並ぶサムスン製テレビ
オフィスの壁にサムスン電子の薄型テレビを並べ、上級顧問に韓国人の仲間たちを選ぶなど、韓国経済の利益を図ったという点を除けば、彼の足跡はほとんど無視できるほどでしかない。
Newsweek日本語版