「安部公房とわたし」山口果林著
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― 週刊SPA!連載「ドン・キホーテのピアス」<文/鴻上尚史> ―
僕は大学に入って、最後の安部公房スタジオの公演に間に合い、何本かの作品を見ました。
渋谷のジァン・ジァンでの公演の時は、当日券でギリギリに入ることができ、思わず興奮して進もうとして、受付にいた山口果林さんから、「お客様、ご入金を」と止められたことをはっきりと覚えています。今から、30年以上前の話です。
あの当時から、安部公房氏と山口果林さんは、男女の仲ではないかという噂が流れていました。僕は、そうかもしれない、そうであったとしてもそれは当然のことなんじゃないかとぼんやりと思っていました。