中国の世論戦激化 「事なかれでは済まない」受けて立った外務省
正月休み明けの1月初旬、東京・霞が関の外務省の一室に集まった同省幹部らは、一様に厳しい表情を浮かべていた。机上には、世界各国に駐在する中国大使らが、赴任国のメディアに投稿した安倍晋三首相の靖国参拝を批判する記事のファイルがあった。
「日本は第二次世界大戦後の国際秩序をいまだに受け入れない」
「中英両国は一緒に戦争に勝った」
中国の大使による投稿記事を分析していくと、共通した特徴が見つかった。
まず、首相の個人攻撃を行った上で「日本は軍国主義に戻りつつある」などと論理を飛躍させる。そして最後に「第二次大戦をともに戦ったわれわれに挑戦しようとしている」と相手国に中国は「戦友」であると呼び掛け、日本が「戦後秩序への挑戦」をしているのだと印象付ける論法だ。
これまでの日本の対外広報戦略は、感情的な反応は避けて、関係国への水面下の根回しで問題の沈静化を図るというものだった。それは「相手の土俵に乗る必要はない。下手に事を荒立て、かえって問題が大きくなるのはまずい」(幹部)との考えからだった。
とはいえ、今回は過去の事例とは事情が違う。中国は外務省が音頭を取り、組織的に「世論戦」を仕掛けてきた。日本の戦後の平和の歩みを意図的に歪(わい)曲(きょく)しつつ、「戦勝国」と「敗戦国」という枠組みを使って対日包囲網を敷こうとしている。